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2021.03.25
Datachain、NTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携
世界初、IBCによる取引仲介者に依存しない方式でHyperledger Fabricと異なるブロックチェーン間の価値移転の実証実験を実施
株式会社Speeeの100%子会社である、株式会社Datachain(以下、Datachain)は、複数の異なるブロックチェーン間のインターオペラビリティ(相互運用性)実現に向け、株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)と技術連携を開始いたしました。
今回の技術連携の一環として、IBC(Inter-Blockchain Communication、以下IBC)による取引を仲介する第三者に依存しないRelay方式を用いた、複数の異なるブロックチェーン間における価値移転の自動化に関する実証実験を実施しました。IBCを用いたHyperledger Fabricと異なるブロックチェーン間のインターオペラビリティの実現は世界初となります。本実証実験により、取引を仲介する第三者に依存せずにインターオペラビリティを実現する方法として、Datachainが開発を行うCross Framework及びIBCモジュールの技術的有用性が検証されました。
Datachainでは、今後もインターオペラビリティ領域を中心にNTTデータとの連携を深め、ブロックチェーンの社会実装を目指してまいります。
■背景
近年、さまざまな分野において、ブロックチェーンの商用化に向けた動きが加速しています。海外では適用事例も多数見られ、日本国内でも商用化を控えたプロジェクトが顕在化してきました。このように、ブロックチェーンの商用化が進み、異なるブロックチェーン上でサービスが実装されると、ブロックチェーン間を接続するインターオペラビリティ技術の必要性が高まってきます。
加えて、日本を含め世界各国で暗号資産やデジタル通貨に関する動きが活発化しており、これらを扱うブロックチェーンと各決済サービスを利用するためのブロックチェーンの接続において、インターオペラビリティ技術は非常に重要です。
取引を仲介する第三者に依存しないインターオペラビリティ手法としては、「HTLC方式」と「Relay方式」の2つの方式があると言われています。
Datachainが技術協力を行っているNTTデータでは、技術研究テーマの一つとして「ブロックチェーンのインターオペラビリティ」に着目し、取引を仲介する第三者に依存せずに「価値の移転」と「権利の移転」を同時実行することを目的に、実証実験を進めていました。
その中で、HTLC方式(*1)では、サービス運営者の決済機能として、①異なるブロックチェーン基盤上において、②秘密鍵をサービス利用企業自身で管理したまま、③取引を自動実行する、という3つの命題(トリレンマ)を同時に解決することは大変難しいものでした。
Datachainが開発するCross Framework及びIBCモジュール(*2)では、お互いのブロックチェーンで相互検証を行う「Relay方式」を採用しており、上図で示されるHTLC方式におけるサービス運営上のトリレンマ解決の可能性が考えられます。
このような背景から、今回、複数の異なるブロックチェーン間の価値移転におけるCross Framework及びIBCモジュールの技術的有用性を検証するために、NTTデータと共同で実証実験を行いました。
*1 HTLC方式:HTLCは「Hashed Time-Locked Contract」の略。インターオペラビリティを実現する代表的な方法の1つ。
*2 Cross Framework及びIBCモジュール:Datachainが開発を行っているインターオペラビリティ実現のためのソリューション。詳細は「技術的なポイント」を参照。
■実証実験の内容
今回の実証実験では、Hyperledger Fabricで構築された「貿易プラットフォーム」と、Cosmos(Tendermint)で構築(*3)された「決済プラットフォーム」を用意し、下図のように、「貿易プラットフォーム上の貿易文書の移転」と「決済プラットフォーム上の資金の移転」のDvP決済を行いました。
貿易業務において、サービス利用者である輸入者と輸出者の行う作業を、「HTLC方式」と「Relay方式を実装したCross Framework及びIBCモジュール」について比較すると、下図のようになります。
HTLC方式では、サービス利用者である輸入者・輸出者が作成した双方のトランザクションを、サービス利用者自身が確認・署名するため、取引中の煩雑な対応が必要になります。サービス利用者による確認・署名を、サービス運営者が代行し自動実行することも可能ですが、秘密鍵の管理に対する制約が大きいため、サービス運営者にとって大きな負担となります。
一方、Datachainが開発を行うCross Framework及びIBCモジュールは「Relay方式」を実装しており、サービス利用者が管理者に秘密鍵を渡すことなく、取引の自動実行(取引中のサービス利用者の操作は不要)を行うことができます。また、HTLC方式ではサポートが難しい任意のデータの連携が発生するような複雑なスマートコントラクトも実装可能です。
これらの特性から、Cross Framework及びIBCモジュールを活用することで、貿易プラットフォームと決済プラットフォームをまたぐAtomic Swap(*4)の自動実行が実現でき、トリレンマ解決への見通しが立ちました。
*3 Cosmos(Tendermint)で構築:コンセンサスエンジンとしてTendermintを利用し、Cosmos-SDKを用いてアプリケーションを構築
*4 AtomicSwap:異なるブロックチェーン間の資産の移転を取引所のような第三者が仲介することなく実現する仕組み
■応用の可能性、ビジネス的な価値
今回の実証実験の結果を受けて、デジタル通貨を利用した効率的かつ実用性、利便性に優れた決済の可能性が確認できたことを踏まえ、以下のような領域への応用を検討しています。
1. 株式会社トレードワルツが運営する貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz®」において貿易関連証券と資金の価値移転の実現
2. NTTデータとSecuritize Japan株式会社が共同研究している証券プラットフォームにおけるDvP決済の実現
3. 電力取引における、P2P電力や非化石証書に係る権利と資金の同時移転
4. 保険領域における、診断データを管理するブロックチェーンと保険契約を管理するブロックチェーンの連携による保険金の自動支払の実現(デジタルアセットの交換だけでなく、任意のデータの連携も可能)
その他のユースケースについても、様々な企業と検討していきます。
海外においてもデジタル通貨を用いた決済のニーズは高く、金融機関を含めさまざまな企業がインターオペラビリティに取り組んでいます。DatachainはNTTデータと協力し、海外での取り組みについても積極的に推進していく方針です。
■技術的なポイント
今回の実証実験における技術的なポイントは以下のとおりです。
1. 世界初となるIBCによるHyperledger Fabricとその他のブロックチェーンのインターオペラビリティを実現
Datachainが開発するHyperledger FabricをサポートしたIBCモジュールを用いることで、世界初となるIBCによるHyperledger FabricとCosmos(Tendermint)ブロックチェーン間のインターオペラビリティを実現しました。
・Relay方式、Cross Framwork・IBCモジュールの技術的詳細はこちら
https://medium.com/@datachain/cross-framework-concepts-3a9d0a7fd86c
・Hyperledger FabricをサポートしたIBCモジュール(Fabric-IBC)の詳細はこちら
https://github.com/datachainlab/public-docs/tree/master/fabric-ibc
2.Cross Frameworkにより複数ブロックチェーン間のAtomicSwapを実現
Datachainの開発するCross Frameworkを用いることで、Cross-chain smart contract(複数の異なるブロックチェーンにまたがるスマートコントラクト)が実装可能になり、複数ブロックチェーン間のAtomicSwapが実行可能になります。これにより、貿易プラットフォームと決済プラットフォームのDvP決済を実現しました。
「Cross Framework」についての詳細はこちら
https://medium.com/@datachain/cross-framework-introduction-f25d7bbfcd9a
■今後の取り組み
Datachainは、引き続きブロックチェーンのインターオペラビリティ領域を中心に、NTTデータとの技術連携を深めてまいります。まずは、異常系の検証やパフォーマンスの向上など、より実用化に向けた検証を行い、早ければ2022年度以降の商用化を目指します。
今回の実証実験で用いたIBCモジュールは、今後、CordaやEnterprise Ethereum(Hyperledger Besu / Quorum等)へも対応予定であり、より多くの企業ニーズに応えてまいります。また、既存システムとブロックチェーン基盤の接続をサポートする「Interchain-bridge (*5)」ソリューションの提供を開始することで、さまざまなブロックチェーンと既存のシステムが相互に連携可能な世界の実現を目指します。
*5 Interchain-bridge:Datachainが開発を進める、IBCを活用した「既存システムとブロックチェーン基盤」の接続等に用いられるソリューション
【NTTデータ 取締役常務執行役員 松永 恒】
「NTTデータではオープンイノベーションの一環として、様々なベンチャー企業と技術連携し、新たなサービスモデルの創出に挑戦しています。
ブロックチェーンがデジタル時代の新しい社会インフラとなるには、インターオペラビリティの確保が不可欠です。今回、縁あってインターオペラビリティについて先進的かつ幅広い知識をもつDatachain社との技術連携の機会を得ました。本実証実験で得られた知見を活かし、ブロックチェーンを使った社会インフラの実現に向けて取り組んでいきます。」
■株式会社Speeeについて
社名 :株式会社Speee
事業概要:MarTech事業、X-Tech事業、その他事業
設立 :2007年11月
所在地 :東京都港区六本木四丁目1番4号
代表者 :代表取締役 大塚 英樹
URL :https://speee.jp/
■株式会社Datachainについて
社名 :株式会社Datachain
事業概要:ブロックチェーン技術に関連する企画・開発
設立 :2018年3月
所在地 :東京都港区六本木四丁目1番4号
代表者 :代表取締役 久田 哲史
URL :https://datachain.jp/
*株式会社Datachainは、株式会社Speeeの子会社です。
*本資料に記載されている会社名、商品名、サービス名は、各社の商標又は登録商標です